世界初、立って漕ぐ小舟で大西洋単独横断に成功

特注パドルボードで93日間、7500キロ、漕いだ回数は200万回

2017.03.15
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パドルボードのキャビンの中にいるバーティッシュ氏。(Photograph Courtesy The Sup Crossing)
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 海とバーティッシュ氏を隔てるデッキの厚さはわずか10センチ。ボードの長さも、彼が通常使っているロングボードより60センチ長いだけだ。

 ボードの先端にはキャビンがあり、そこがバーティッシュ氏の夜間のシェルターとなるほか、衛星携帯電話や電波探知機、ノートパソコン、海水から真水を作る装置(1日に必要な水は10リットル、それを90日分積み込むのは不可能だ、と彼は言う)、ラジオなども収納されている。

 航行中の船に自分の存在を知らせるためのレーダーをのぞいて、すべての機器が動かなくなることもあったらしい。

 予測不能な天候やさまざまな生き物との遭遇に加え、ボードの問題にも何度も直面した。海に出てからわずか数日後に舵が故障し、大急ぎで代わりになるものを見つけなくてはならなかった。

「パドルボードが持ちこたえられないのではないか、という恐怖を感じたのは一度や二度ではありません」と彼は言う。「ばらばらになるのではないかと心配でした」

寄付金は慈善団体へ

 ある夜、海が荒れてセンターボード(帆船などの小さな船のバランスを保つために船底中央についている板)に綱が絡まったことがあった。デッキに出たら危ないのはわかっていたが、綱をほどく必要がある。やむを得ずナイフを持って、ボードの下に潜り、作業をしていたところへ波が来た。バーティッシュ氏はボードから離れてしまったが、その拍子にセンターボードに絡まった綱がナイフで切れた。危うく指を切り落とすところだったが、ちょうど絆創膏が貼ってあったので助かった。

 南アフリカの金融グループ、キャリック?ウェルスの後援を得たこの航海?#25991;?#30340;は、慈善金を集めること?#21462;?#21487;能性の限界に挑戦することだった。集まった寄付金600万ドル(約7億円)の大半は、南アフリカの貧しい地域の子供たちに食事を配給するチャリティ―団体?#21462;?#21475;唇裂などの?#20013;g費用を援助する団体、アフリカの社会を支援する非営利団体の3団体に贈られた。

 バーティッシュ氏が強靭な体力を披露したのは、今回が初めてではない。サーフィンでも長距離のパドルボード競技でも新記録を打ち立てたことがある。

 今回の航海は困難なものだったが、その価値は十分にあったと彼は強調する。このおかげで、慈善金を寄付し、南アフリカの子供たちのために役立てることができるのだ。「どういう反響を呼ぶかわかっていたからこそ、大海原での毎日にやりがいを感じられたのです」

文=Sarah Gibbens, Delaney Chambers/訳=潮裕子

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